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マンハッタンの埋め立て地|ごみと建設残土が形づくるニューヨークの街

New York Central Park

マンハッタンの現在の姿は、自然の地形だけでなく、人の手によってつくられた「埋め立て地」によって形づくられています。ごみや建設残土を再利用しながら街を拡張してきた歴史は、都市づくりと環境の関係を考える上でも興味深いテーマです。

マンハッタンの埋め立て地と都市の拡張

マンハッタンには、埋め立てによって拡張された土地が数多く存在します。これは、ハドソン川、イーストリバー、アッパー・ニューヨーク湾の海岸線に沿って、数世紀にわたって行われてきました。現在の街並みの一部は、自然の地形ではなく、人の手によって造成されたものです。

代表的な埋め立て地のエリア

  • バッテリー・パーク・シティ(1960年代~1970年代)
    ワールド・トレード・センター建設時に出た約120万立方ヤードの土砂を利用し、約37ヘクタール(92エーカー)の土地が造成されました。
  • ザ・バッテリー(1855年以降)
    道路拡張工事などで出た土砂によって埋め立てが進められ、キャッスル・ガーデン島とマンハッタン本土が結合しました。
  • FDRドライブ沿い
    イーストリバー沿いの高速道路「FDRドライブ」は、杭打ちや盛り土を伴う埋め立てによって造られた土地の上に整備されています。

現在、マンハッタン島の約4分の1は埋め立て地だと言われており、その歴史はオランダ植民地時代にまでさかのぼります。初期は廃棄物や建設残土を直接投棄する方法が多く採られていました。

ニューヨーク市全体の例

ニューヨーク市の埋め立て地の象徴的存在が、スタテンアイランドのフレッシュ・キルズ・ランドフィル(Fresh Kills Landfill)です。かつて世界最大級のゴミ埋立地でしたが、現在は閉鎖され「フレッシュ・キルズ・パーク」として再生されつつあります。その広さはセントラル・パークの約3倍に及びます。

マンハッタンの埋め立て工法

歴史的な工法

  • クリビング(Cribbing)
    17世紀のオランダ人が採用した工法。丸太を組んで箱状にし、そこに土砂やゴミを詰めて沈めることで岸壁を形成しました。古い船を沈めて利用することもありました。
  • 土砂とごみの投棄
    19世紀には、建設工事の残土や家庭ごみ、灰などをそのまま河川や湾に投棄し、土地を広げていきました。

現代の工法と具体例

  • 建設残土の再利用
    ワールド・トレード・センター建設時に掘削された膨大な土砂は、バッテリー・パーク・シティの造成に再利用されました。
  • 瓦礫の利用
    第二次世界大戦後、イギリスの空爆で破壊された建物の瓦礫が船のバラストとして運ばれ、FDRドライブの埋め立てに使用されました。

埋め立て地の課題

埋め立て地は地盤が不安定になりやすく、超高層ビルを建設する際には地盤改良が欠かせません。ジェットグラウト工法などによって地中に硬化材を注入し、支持力を確保します。また、ごみ埋立地ではガス収集システムや汚染水処理設備が整備され、環境への影響を管理しています。

参考動画

ニューヨークがどのように「ごみ」を利用して街を拡張してきたかを紹介する動画も公開されています。埋め立ての歴史を視覚的に理解する手がかりになります。


How Garbage Helped Build Up New York – YouTube(CNN10)

埋め立ては、都市の発展に不可欠であった一方で、地盤や環境への課題も抱えています。ニューヨークの歴史は、建築や都市計画において「限られた土地をどう活用するか」という普遍的な問いを投げかけているといえるでしょう。