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風圧力の計算ってややこしい?告示1454号をかんたんに読み解いてみた

建築に作用する「荷重と外力」

建築基準法施行令では、建築物に作用する荷重および外力として以下の5つが定められています。

  • 固定荷重
  • 積載荷重
  • 積雪荷重
  • 風圧力
  • 地震力

今回はこの中でも、特に計算がややこしい「風圧力」について、実務の観点から整理してみます。

風圧力の定義と基本式(施行令第87条)

風圧力は、「速度圧に風力係数を乗じて計算する」こととされており、速度圧は次の式で計算されます。

q = 0.6・E・V02

  • q:速度圧(N/m²)
  • E:補正係数(建物高さや周辺の地形に基づく)
  • V0:基準風速(地域ごとに30~46m/s)

※宮城県の基準風速V030m/s です。

風荷重の計算式(H12告示第1454号)

告示第1454号では上記Eの数値、基準風速Vo、風力係数Cfについて定めており、最終的な風荷重Pは以下の式で計算します。

P = C・q・A

  • P:風荷重(N)
  • C:風力係数
  • q:速度圧(N/m²)
  • A:見付面積(m²)

補正係数 E の算出方法

Eは以下の式で求められます。

E = Er2・Gf

  • Er:平均風速の高さ方向分布係数
  • Gf:ガスト影響係数

Er は以下の条件で変わります。

    • H ≦ Zb の場合:Er = 1.7・(Zb/ZG)α
    • H > Zb の場合:Er = 1.7・(H/ZG)α

*H 建築物の高さと軒の高さとの平均

粗度区分ごとの定数

区分 Zb ZG α Gf(H=10以下〜40m以上:~は直線的に補間)
I(障害物なし) 5 250 0.1 2.0〜1.8
II(海岸近傍など) 5 350 0.15 2.2〜2.0
III(一般地域) 5 450 0.2 2.5〜2.1
IV(都市部) 10 550 0.27 3.1〜2.3

風力係数 C(Cf)の求め方

風力係数Cfは、外圧係数Cpeと内圧係数Cpiの差で求められます。

Cf = Cpe – Cpi

  • Cpe:外圧係数(建物外から押す圧力・垂直に押す方向を正)
  • Cpi:内圧係数(建物内から押す圧力・垂直に押す方向を正)

以下の図と表は、建物形状別に用いるべき係数を示しています。

図1:閉鎖型建物(張り間方向)表1~表5を用いる


図1 閉鎖型建物(張り間方向)

図2:閉鎖型建物(けた行方向)表1、2、表5を用いる


図2 閉鎖型建物(けた行方向)

図3:開放型建物 表1、3、表5を用いる


図3 開放型建物

表1:壁面の外圧係数(Cpe)図1~3で使用


表1 壁面のCpe

表2:陸屋根面の外圧係数(Cpe)図1、2で使用


表2 陸屋根面のCpe

表3:切妻・片流れ・のこぎり屋根面の外圧係数(Cpe)図1、3で使用


表3 切妻・片流れ屋根のCpe

表5:内圧係数(Cpi)すべての図で使用


表5 内圧係数

補足:構造形状と記号の意味

図表中に出てくる記号の意味や、風向(→)を表す記号などについても以下の図にまとめられています。


構造と記号の関係図

まとめ

ここまで見てきたように、風圧力は建築物の形状や立地、周囲の状況によって細かく条件が分かれています。

告示第1454号を確認しながら、パラメータを順番に拾っていけば、実務上の計算もぐっとわかりやすくなります。

荷重・外力の中でもとりわけ複雑な「風圧力」の基本について、今回は整理してみました。