2025年8月7日、NHKニュースが報じた「自衛隊で初配備 ステルス戦闘機F35B 新田原基地に到着」。
F35Bは短距離離陸・垂直着陸(STOVL)が可能な最新鋭ステルス戦闘機です。防衛省は、このF35Bを運用するため、海上自衛隊の大型護衛艦を“事実上の空母”へと改修しています。
ここで気になるのが「改修」という言葉。
建設業界の感覚では、オフィスビルや工場、体育館や住宅のリフォームを連想しますが、大型護衛艦の改修は全く別の領域です。では、あの巨大な艦は一体どこで、どのように改修されているのでしょうか。
ジャパンマリンユナイテッド(JMU)横浜事業所(磯子)
国内有数の造船・修繕設備を持ち、「いずも」型護衛艦の建造元でもある拠点。2020年頃からF35B対応の大規模改修工事が行われています。
呉・佐世保の海上自衛隊基地
軽度の改修や装備調整、定期点検は海自基地でも可能。ただし艦体構造を変えるような大掛かりな工事は、民間造船所の設備が不可欠です。
飛行甲板の耐熱強化
F35Bのエンジン噴射は甲板を焦がすほど高温。耐熱塗装や構造補強で熱対策を施します。
航空管制・着艦誘導装置の改良
空母として運用するため、艦橋に新たな管制装置や誘導設備を追加。
格納庫・エレベーターの調整
F35Bの整備・運用に合わせ、格納スペースや昇降設備の配置を最適化します。
造船所は一つの大きな建物ではなく、複数の作業施設が集まった巨大な工業ゾーンです。
工場(ファブリケーションショップ):鋼板の切断・溶接など屋内作業。
建造ドック:水を抜いて船体を組立て、完成後に注水して進水。
組立ヤード:巨大ブロックを合体させる屋外広場。
岸壁(バース):係留中の艦に艤装・補修を行う場所。
造船所の大部分は屋外です。理由は単純かつ明快。
船体が巨大すぎて屋根が非現実的
大型クレーンの可動域を確保するため屋根は邪魔
屋根をかけても高さ・広さが不足し、天候から完全には守れない
屋根があるのは鋼板加工や塗装など、天候の影響を受けやすい工程だけ。組立や艤装は基本的に雨天でも続行されます。
大型護衛艦の改修は、道路や橋梁の建設と発想が似ています。
規模が桁違い:屋根をかける方が本体より高くつく場合も。
クレーン必須:屋根は作業効率を阻害する。
工程の流れ:大型部材を事前製作し、現場で合体させる。
建物の「改修」が室内の作業中心なのに対し、護衛艦の改修は海風と鉄と天候に挑む屋外重工業の世界。
そこでは、艦を“戦える姿”へと作り変えるための、スケールも方法も桁違いの改修が日々行われています。