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地震や老朽化によるブロック塀の倒壊事故は、毎年のように報告されています。
塀は単なる「囲い」ではなく、人の命を守る構造物です。
ここでは、建築基準法施行令第62条の8に定められた最低基準と、日本建築学会による「ブロック塀施工マニュアル(学会設計基準)」をもとに、安全なブロック塀のあり方を整理します。
補強コンクリートブロック造の塀は、次の基準を満たさなければなりません。
(高さ1.2m以下の場合は、第5号および第7号を除く)
高さ:2.2m以下
厚さ:高さ2m以下なら10cm以上、それ以上なら15cm以上
鉄筋:壁頂・基礎に横筋、端部・隅角部に縦筋(径9mm以上)
縦横筋の間隔:80cm以下
控え壁:3.4m以下ごとに設置し、高さの1/5以上突出
鉄筋の定着:縦筋・横筋をかぎ掛け、または十分な長さで基礎へ定着
基礎:丈35cm以上・根入れ30cm以上
これらは最低限守るべき構造基準です。
ただし、実際の現場ではこの基準を満たしていても、地盤条件や施工品質によっては十分とは言えない場合があります。
日本建築学会の「ブロック塀施工マニュアル」には、より詳細な設計条件・施工手順が定められています。
この「学会設計基準」は、建築基準法よりも厳格であり、より安全性を高めたい場合に採用すべき指針です。
例えば、
鉄筋のかぶり厚さや継手長さ
コンクリートブロックの品質管理
風圧や地震荷重に対する安全率
など、実務的かつ信頼性の高い基準が細かく規定されています。
法令遵守は当然として、設計者や施工者がより高い安全基準を自主的に取り入れることが、信頼される塀づくりにつながります。
ブロック塀の安全性を判断するうえで、次のような誤りがよく見られます。
高さの測定位置の誤り
塀の高さは「支持地盤の低い方」から測ります。
例えば、道路側や隣地側が低い場合は、そちらの地盤から測定します。
側溝がある場合は、その側溝の底から測る必要があります。
擁壁上のブロック塀
組積造や間知石積みなどの擁壁の上にブロック塀を載せている場合、構造的に危険です。
塀全体が転倒するおそれがあり、原則として認められません。
土圧がかかっている塀
背面に土を受けているブロック塀(40cm以上の土圧)は危険です。
ブロック塀は擁壁構造ではなく、土留め用途には不向きです。
代表的な不適合例としては次のようなものがあります。
高さ1.2mを超えているのに控え壁がない
控え壁があっても3.4mの間隔を超えている
高さを高い方の地盤から測っており、実際より低く見積もっている
こうした場合、是正方法としては次のような対応が一般的です。
敷地の低い方から高さ1.2mを基準に塀をカットする
基礎部分を既存利用し、上部ブロックを撤去・新設する
プライバシー確保のためには、アルミフェンスなど軽量な構造を併用する
なお、学会設計基準では、ブロック塀+フェンスの全高は2.2m以下とするよう求めています。
所有者自身が安全点検できるよう、自治体や建築士会などでは「ブロック塀の診断カルテ」が配布されています。
点検項目には、ひび割れ、傾き、鉄筋のさび、水抜き穴の有無などが含まれます。
専門家に依頼する前に、まず日常的に点検・記録しておくことが大切です。
ブロック塀は、住宅を囲むもっとも身近な構造物でありながら、倒壊時のリスクも大きいものです。
**「法令を守る+学会基準を意識する」**ことで、より安全で長持ちする塀を実現できます。
そして、定期的な点検こそが、家と家族を守る第一歩です。
参考:国土交通省「あんしんなブロック塀を目指して 問いかけられる自己責任」
(文責:齋藤建築設計事務所)