令和6年12月6日付で、国土交通省より「国住指第318号」として、新たに
『既存建築物の現況調査ガイドライン』(以下「新ガイドライン」)
が公表されました。参考:国土交通省HP 既存建築物の活用の促進について
この新ガイドラインは、既存建築物を 増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替(以下「増築等」)しようとする場合に、建築士が建築基準法令への適合状況を調査するための手順や方法を定めたものです。
新ガイドラインの公表に伴い、従来運用されてきた
「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月2日付 国住指第1137号)
は廃止となりました。(こちらについて以前に書いた記事は)→それ、違反かも?建築基準法適合状況調査のはなし
これにより、検査済証の有無を問わず、既存建築物の現況調査が一本化され、より分かりやすく整理された形になります。
建築基準法改正の施行により、
改正前の法第6条第1項第4号に掲げる建築物のうち、改正後の法第6条第1項第2号に該当する建築物(例:木造二階建て住宅等)を増築・改築・移転しようとする場合、
審査・検査項目が増加します。
さらに、大規模の修繕や大規模の模様替を行う場合には、新たに建築確認・検査が必要となりました。
つまり、新ガイドラインは、まさに 木造二階建て住宅の増改築・用途変更を中心に据えた内容 と言えます。
国交省は、空き家の活用を進める中で、特殊建築物への用途変更や改修を促進しています。
一方で、今回の改正により、空き家の多くを占めるであろう木造二階建て建物に対して、確認・検査がより厳格化されるというのは、現場としてはややハードルが上がる印象です。
新ガイドラインには、調査報告書の雛型も公開されています。
見たところ、木造二階建ての増改築だけでなく、用途変更・大規模修繕・模様替にも対応できる構成となっています。
また、非住宅・非木造・中大規模建築物の場合には、
「調査項目を適宜追加して編集して使用すること」
と明記されており、その場合は廃止となった旧ガイドラインの内容を参考資料的に参照することが想定されます。
最大の違いは、
検査済証がある建物でも、調査報告書の提出が必要となった点です。
また、違反建築物だった場合でも、
特定行政庁の是正指導や検査を待たずに確認審査に入ることが可能になりました。
2.検査済証の交付を受けずに建築された建築物の増築等に係る確認審査等の運用について
法第7条等の規定により建築主が工事を完了した際に完了検査を受検し、検査済証の交付を受けなければならなかったにもかかわらず検査済証の交付を受けていない場合、当該建築主が当該規定に違反していることは言うまでもないが、検査済証が交付されていないことのみをもって、直ちに、当該工事に係る建築物に対して特定行政庁による違反建築物に対する措置が必要であると判断されるものではない。
また、当該建築物において建築基準法令の規定(既存不適格である規定を除く。)に適合しない部分がある場合であっても、当該部分を含む計画建築物全体を建築基準関係規定に適合させる増築等について、建築主事、建築副主事又は指定確認検査機関による建築確認・検査を受け、適法に増築等を行うことが可能であることから、必ずしも、確認審査等の前に特定行政庁において当該建築物が違反建築物であるか否かを確定することを要しない。
なお、このことは当該建築物が違反建築物であることを特定行政庁が確知している場合において、特定行政庁が違反是正の措置を講じることを妨げるものではない。
新ガイドラインを読み進める中で気づかされたのは、
用途変更の際には完了検査が不要という点です。
つまり、用途変更工事が完了した場合、
特定行政庁へ「工事完了届」を提出するのみでよく、完了検査を受ける必要はありません。
条文上も明記されていますが、「用途変更=完了検査あり」と思い込んでいた人にとっては再確認の機会となりそうです。
なお、特殊建築物への用途変更であっても、200m²を超えなければ確認申請は不要です。
ただし、建築基準法および関係規定への適合は必須である点には注意が必要です。
「新ガイドライン」は、
木造二階建てなど中小規模の既存建築物を扱う設計実務において、現況調査・確認申請手続きの新しいスタンダードとなります。
空き家再生や用途変更、店舗併用住宅などの計画を行う際には、
今後このガイドラインに基づく調査と報告が求められることになります。
📄 参考:
国住指第318号(令和6年12月6日)
既存建築物の現況調査ガイドライン(国土交通省)
廃止:国住指第1137号(平成26年7月2日)