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―「既存不適格建築物の増改築・用途変更」(新日本法規出版)を参考に―
民泊は、旅館業法、国家戦略特別区域法、住宅宿泊事業法のいずれかに基づき営業することになりますが、それによって建築基準法上の取り扱いも変わります。
今回は旅館業法に基づく「簡易宿所営業」を行う施設とし、建築基準法上の用途は「旅館・ホテル」とします。
戸建て住宅を特殊建築物に用途変更する場合、
その用途に供する部分の床面積が200㎡以下であれば、
建築確認は不要です(令和元年6月25日施行)。
※建築確認が不要であっても、建築基準法・消防法などの
建築基準関係規定への適合は必要です。
(例:避難・防火・採光・換気・構造・設備など)
旅館・ホテル用途では、階段の寸法が以下のように規定されています。
幅:75cm以上
蹴上:22cm以下
踏面:21cm以上
住宅仕様のままでは寸法不足となる場合があり、
改修が必要となるケースもあります。
ただし、平成26年国交告709号により、
以下の措置を講じることで一部緩和が認められています。
階段の両側に手摺を設ける
踏面の表面を滑りにくい仕上げとする
「十分注意して昇降を行う必要がある」旨の注意書きを表示
これらの条件を満たせば、
階数が2以下・延べ面積200㎡未満の建築物については、
住宅と同等の基準(幅75cm以上、蹴上23cm以下、踏面15cm以上)で可。
(3階建ての場合は踏面19cm以上)
旅館・ホテルは、主要構造部が準耐火構造または不燃材料でない場合、
2階の宿泊室の床面積の合計が100㎡を超えると、
2以上の直通階段が必要となります。
ただし、令和2年4月1日改正により、
階数3以下・延べ面積200㎡未満の旅館・ホテルでは、
階段部分を間仕切り壁や戸(簡易的な竪穴区画=準竪穴区画)で区画すれば、
階段1つでも可となりました。
旅館・ホテルでは、
居室および避難通路(廊下・階段等)に非常用照明の設置が必要です。
ただし、平成12年建告1411号により、以下の場合は居室部分の免除が可能です。
居室から屋外出口までの歩行距離が
1階で30m以下、2階で20m以下
居室の床面積が30㎡以下
※避難経路には設置が必要。
※採光のない無窓居室は免除対象外です。
避難階の出口および屋外避難階段から道路に通じる敷地内通路については、
原則1.5m以上の幅員が必要です。
ただし、令和2年4月1日改正により、
階数3以下・延べ面積200㎡未満の建築物では90cm以上で可。
宿泊室相互間の壁は、
準耐火構造とし、3室以下合計100㎡以内に区画します。
(ただし1室が100㎡超の場合はその限りでない)
また、避難経路や火気使用室も区画が必要です。
壁は小屋裏または天井裏まで達すること。
ただし、以下のいずれかを満たす場合は、
天井裏まで達しない構造でも可です。
自動スプリンクラー設備等を設置
強化天井(遮炎性能あり)とする
居室の床面積が100㎡以下の階で、
次の条件を満たす場合は防火区画の改修が不要とされています。
各居室に煙感知式の住宅用防災機器または自動火災報知設備を設置
各居室から直接屋外への出口がある
または、屋外の出口までの歩行距離が
8m以内(内装不燃化の場合は16m以内)であること
ホテル・旅館が3階建ての場合、
原則として耐火建築物とする必要があります。
ただし、延べ面積200㎡未満の建築物では、
改修不要とされています。
また、以下の措置が必要です。
消防法令に基づく自動火災報知設備の設置(R1国交告198号)
竪穴部分を間仕切り壁または遮煙性能を備えた戸で区画
住宅用途は工業専用地域以外で建築可能です。
一方、ホテル・旅館用途は以下の地域では建築できません。
第一種・第二種低層住居専用地域
第一種・第二種中高層住居専用地域
田園住居地域
工業地域・工業専用地域
一戸建て住宅を民泊へ用途変更する場合、
延べ面積200㎡未満であれば建築確認が不要となるケースもありますが、
建築基準法・消防法上の性能基準適合は不可欠です。
特に、階段寸法・非常用照明・防火区画・避難経路など、
旅館・ホテル用途特有の要件を丁寧に確認することが重要です。
参考文献
『既存不適格建築物の増改築・用途変更』(新日本法規出版)
建築基準法施行令・各種国土交通省告示(令709号、860号、1411号、198号ほか)