お盆休み中、血圧・メタボ対策も兼ねて、堤防から堰方面の「アユの里公園」沿いをジョギングとウォーキングで巡りました。
かつて子どもの頃、鳴瀬川は広々としていて、流れ際の砂利に降りて川遊びをしたものです。コンクリートの護岸は今も残っていますが、川幅は狭まり、岸辺は草に覆われて近づけない場所が多くなりました。
護岸沿いには「テトラポッド」が並んでいた記憶がありますが、今は土や草の下に埋もれてしまい、姿を見つけることはできません。思えば危険だったかもしれませんが、あの灰色のブロックを友達と飛び跳ねながら遊び回った記憶は鮮明に残っています。今回は、この「テトラポッド」についてまとめてみたいと思います。
海岸や河川に設置される消波ブロックの一種
名前の由来は「テトラ=4」「ポッド=足」で、4本足を持つコンクリートブロック
波を受けると足が絡み合って倒れにくく、波のエネルギーを分散して護岸を守る
護岸・防波 – 波の力を弱め、港や海岸線を守る
洗掘防止 – 海底や川底が削られるのを防ぐ
安定性 – 積み重ねても絡み合って崩れにくい
1950年にフランスで発明
日本には1950年代に導入され、1960年代以降は港湾・漁港・海岸整備で全国に普及
「テトラポッド」は商標で、一般名は「消波ブロック」や「消波工コンクリートブロック」
海の場合 → 波のエネルギーを消すのが目的
川の場合 → 波はないため「流れの制御」「護岸保護」が主目的
洪水時の流速を弱める
川底の洗掘を防ぐ
流れを分散・誘導して堤防を守る
川ではテトラポッド型のほか、立方体の「根固めブロック」や石を詰めた「蛇籠」なども用いられる。
四角いブロックは飛び石のように渡れる
テトラポッドは隙間が秘密基地のように見える
水辺にあるため、夏になると子どもが自然に集まる
本来は治水のための構造物ですが、子どもの目には「巨大なジャングルジム」に映っていました。
テトラポッドは半永久的に見えて、実は「撤去」「更新」「埋没」という運命をたどります。
撤去される場合
河川改修工事
老朽化や破損
「自然に近い川づくり」への転換
埋もれる場合
洪水による土砂の堆積
隙間に土がたまり、草木が繁茂して地面化
多くの場合、費用の関係で撤去はされず、自然に埋もれて姿を消していきます。
「昔は川が広く遊べたのに、今は草が生えて狭くなった」──これは全国の一級河川で共通して起きている現象です。
砂利採取がなくなった
昔は建築用資材として砂利を採取していたため、河床が下がり川幅が広かった。
環境規制で採取がなくなり、土砂が堆積して川が「盛り上がる」方向に変化した。
流路の固定化
蛇行や浸食が抑えられ、直線化された結果、流れが弱まり土砂が溜まりやすくなった。
草が生える理由
流れが弱くなると砂利や土が沈み、中州や土手が形成される。
そこに草木が根付き、やがてヤナギ類が育ち「川原の草むら」となる。
治水方針の変化
戦後〜高度経済成長期は「広く浅い川」で洪水を逃がす方針。
近年は「堤防の中で深く狭く流す」方針に変わり、川原に降りられる場所が減った。
テトラポッドは本来「防災の番人」だが、子どもたちには遊び場のように映った。
今は土砂と草に埋もれて姿を消し、かつての川遊びの風景は失われている。
川が狭く草むらになったのは、砂利採取の終焉・流路固定化・治水方針の変化が背景にある。
かつての鳴瀬川の広い川原や、飛び跳ねて遊んだテトラポッドは、いまでは思い出の中にしか残っていません。
しかしそれもまた、時代と自然と人の関わりの移ろいを映す風景の一つなのだと思います。